医療情報技師という資格をご存知でしょうか?
あまり有名ではありませんが、日本医療情報学会 情報技師育成部会が実施している資格試験であり、国家資格ではなく民間資格の1つとなります。
私は以前この資格を取得したので、医療情報技師についてのメリットや試験の難易度、仕事内容などについて体験談をもとに解説いたします。
医療情報技師とは
医療情報技師とは、医療機関における膨大なデータの管理や情報システムのトラブルを解決、電子カルテシステムの導入やメンテナンス、物流・経営管理、患者アメニティのための情報提供、また病院内のネットワークやサーバーの管理、セキュリティ対策、その他情報システムの管理など幅広く対応する技術者です。
診療のプロセスを理解し、診療の目的に沿った使い勝手の良い情報システムを構築し、情報システムを導入、運用して蓄積したビッグデータを多目的に活用できる人材が求められます。
このような人材を育成し知識やスキルを証明するのが医療情報技師能力検定試験です。
近年では医療業界でもIT化が進み、ITシステムが医療の質や医療効率を向上させ、医療現場の経営までも支援しており、医療の提供に情報システムは必要不可欠です。さらにIoTやAIによる手術、クラウドによるビッグデータの管理などますますIT技術は発達していきます。しかし医師や看護師などの医療人はコンピュータを使うことが本来の仕事ではなく、すべての医療スタッフがこのようなITシステムを使いこなせるものではありません。
そのため、医療の知識にも精通したITエンジニアのニーズが高まってきています。
資格試験の概要
受験方法や試験の流れなどについては医療情報技師育成部会のホームページに詳しく記載されていますので、ここでは試験の概要について解説いたします。
・受験資格:特になし(誰でも受験することができます)
・受験料:15,000円
・試験方法:マークシート
・試験日:毎年1回 8月に開催されています。
・試験場所:全国で開催されています。
・試験科目:情報処理系(60分)、医療情報システム系(90分)、医学・医療系(60分)
医療情報技師として認定されるには上記3科目すべてに合格する必要があります。合格しなかった科目がある場合は、その科目だけを再受験し合格すれば認定されます。
選択肢の中から正解を選択していく問題ですが、5択の中から2つ選択などの問題も多く出題されます。また、「誤っているのはどれか」などの問題が多いため問題文はしっかりと読んだほうが良いです。
詳しくは医療情報技師育成部会の公式サイトをご確認ください。
試験の難易度について
公式サイトを確認すると、受験者数は毎年約4,000~4,800人、合格者は1,500人前後です。
合格率は約33%前後となっており、3人に1人くらいは合格できるようです。
ITエンジニアとしての感想ですが、僕が受験した感覚では普段ITエンジニアとして仕事をしている人であれば、[情報処理系]の科目は特に勉強する必要がないほどのレベルでした。ITパスポート試験くらいの内容だと感じました。
逆に[医学・医療系]の科目についてはまったく知識がない状態でしたが、そこまで専門的な内容はなく、医療についての基礎的な仕組みや専門用語、傷病名や検査名などを覚える暗記系の問題が多い印象です。試験範囲もそんなに広くはないので、勉強に時間はかからなかったです。看護師など医療系で仕事をしている人であれば勉強は必要ないかもしれません。
[医療情報システム系]については、医療と情報システムの中間という感じで、電子カルテやその他医療系システムの機能などについての問題が出題されました。情報システム系に近い問題も多いのでITエンジニアであれば[医学・医療系]よりも簡単な印象でした。
あくまで個人的な感想ですが総合的な難易度でいうと、IT系の資格で例えるとすれば基本情報技術者試験よりも少し簡単くらいの難易度に感じました。
医療情報技師のメリット
医療情報技師になるメリットを解説いたします。
医療の知識が身につく
医療情報技師になることで、医療に関する簡単な知識や医療制度に詳しくなることができ、普段から医療関係者と密接に関わりリアルな医療現場の体験ができるので、かなりの医療に関する知識が身につきます。
もし家族や友人が何かの怪我をしたり突然倒れた場合にも、専門的な治療まではできないかもしれませんが、ちょっとした医療の知識でサポートし助けられるかもしれません。
医師や看護師と仲良くなることができる
普段IT業界ではまず関わることのできない医師や看護師さんとのやり取りが不可欠なので、医師や看護師さんと仲良くなったり友だちになれるかもしれません。
病院のサービスを無料で受けることができる場合がある
企業にもよりますが、病院系列や医療機関のグループ会社に入社すれば、その系列病院での診察やちょっとした治療は無料で受けられる福利厚生がある企業が多いようです。
僕が実際に面接を受けた病院系列会社では、社員は無料で診察や治療を受けることができ、さらに社員の家族までも無料とのことでした。よく通院する人や、家族がいる場合にはとても助かる福利厚生ではないでしょうか。
医療情報技師の参考書と勉強法
医療情報技師の勉強法はITエンジニアの人であれば、以下の過去問題集を解き、答えの解説を読むだけで十分だと思います。過去5年分の過去問が載っており、答えの解説もしっかり記載されています。解説を読みわからない箇所でもgoogleで検索する程度で理解できました。問題集で8割ほど正解できるようになれば合格できます。
他にも科目ごとに分厚い参考書が売っているのですが、試験に合格したいだけであれば必要ないです。僕は試験に落ちるのがどうしても嫌だったので上記の問題集を3回ほど読み返し、2ヶ月ほど勉強しましたが、早い人であれば1ヶ月もかからずに容易に合格可能でしょう。
おすすめの参考書・問題集については以下記事で解説しました。
医療情報技師の就職先について
医療情報技師の就職先は、主に病院の院内SE(システムエンジニア)や電子カルテなどの開発元のソフトウェア会社、その他医療システムの開発や運用保守会社などが挙げられます。
病院や医療機関に常駐したりサポートにいくことが多く、病院の医師や看護師と打ち合わせをする機会が多いので、医療分野の知識や理解が必須となります。医療情報技師の資格保有が必須と義務付けられているわけではありませんが、資格を取得していないと就けない案件や、取得資格により手当が貰える企業があります。
また、病院は24時間体制で稼働している場合も多く、情報システムの緊急トラブル時には対応が必要になる場合があるので、院内SEは交代で夜勤で働くことも多いです。
院内SEの年収については下記で解説しました。
病院の院内SE(システムエンジニア)について
院内SEにはメリットも多いのですが、基本的に給与が低く休みも少ない傾向にあるようです。
僕は以前、転職の際にいろいろな企業に面接に行きましたが、ある病院のグループ企業で、院内SEの内定も貰うことができました。仕事内容は病院内の情報システムの運用保守、医師や看護師さんからのITに関する要望やトラブル解決などの担当で、夜勤もあるようでした。
最終的に内定は辞退したのですが、辞退した理由としては給料が安く休みが少ないからです。当時僕は社会人3年目の25歳でしたが、提示された給与額の年収予想額が350万円ほどで、しかも時間外手当3万円込み、夜勤手当2回分込み、さらに医療情報技師の資格手当5,000円込みでした。病院のため普通の企業より休日もかなり少なめで、年末年始も稼働しているとのことでした。
以下が実際に提示された給与予定明細書になります。
※すべての院内SEに当てはまるわけではありません。あくまでも僕の体験談として参考にしてもらえたらと思います。
合格後
資格試験に合格すれば、認定証、認定カード、認定バッジが後日郵送されてきます。
まとめ・感想
医療情報技師の資格は、ITエンジニアの人で医療関係のシステム開発や運用保守をしたい人であれば必ず取得しておいたほうが良い資格です。医療に興味がない人であれば取得する必要はないと思います。
医療に興味がなくても、取得するだけで手当がついたり、報奨金(インセンティブ)が出る企業もありますので、ITエンジニアであれば比較的簡単なので取得してみるのも良いかもしれません。
私が以前在職していた特定技術者派遣の会社の場合、なぜか医療情報技師の資格を持っているだけで資格手当として毎月1万円支給されました。医療に関係ない派遣先だったのですが、毎月1万円は大きいと思い比較的簡単に取得できそうだったので取得しました。特に医療に興味があったわけではありません。
医療に興味があり医療関係のシステム開発や院内SEの仕事がしたいと思っている人にとっては、医療情報技師の資格は必ず有利になりますので、ぜひ取得されてみてはいかがでしょうか。
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